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大将棋における嗔猪の動かし方のルール(長さん)

前に、中将棋に興味を持つ方が自身のホームページで、水無瀬兼成
の将棋部類抄の、嗔猪の動かし方で、後ろの隣接升目に動けない
とされている点を問題にされていた事があった。このケースは、た
とえば江戸時代の将棋の書で、西暦1694年版の諸将棋図式(正
しくは、「将棋」は「象戯」。以下簡単のため、現代字に代えている)
の筆写本で、故松浦大六氏が所蔵し、増川宏一先生が自身の著書で
本文を紹介されている、将棋図式に、嗔猪の動かし方のルールは、
「前後左右歩む」との旨になっており、図にも四方向動きで書かれ
ているので、水無瀬兼成の将棋部類抄とは、確かに違っている。
 従来駒の種類が多く、小駒が目立たない日本の駒数多数将棋、
たとえば後期大将棋で、嗔猪の異説だけが取り上げられて問題にさ
れる事はほとんど無かったと思う。しかしながら、私の場合、西暦
1300年時点で、68枚制の平安大将棋から、その時代の大将棋と
私が考える、108枚制の普通唱導集大将棋に、新たに加わった、
隣接升目だけに動かせる小駒は、嗔猪ただ一種類だと考えている
ため、嗔猪の動向はかなり重大な事項となってしまう。

しかもルールは、安土桃山時代の文献より、江戸時代の文献が正しい
方が、実は私の説にとっては都合が良いのである。

なぜなら私の説では、当時大将棋に存在した、猛虎の動きの斜めと
縦横を入れ替えて、嗔猪にしたと考えるからである。これは、
当時のシャンチーの象・相動きの酔象、猛虎が、酔象と猛虎の間
に麒麟か鳳凰が挟まる点に目をつぶれば、当時のシャンチーの象・相
動きを斜めと縦横とで入れ替えた、猛牛、そして嗔猪が、4つ一組
で、比較的ルールが覚えやすいように、並べられたと推定している
点からきている。なお嗔猪が小駒であるという点に関しては、相手の
走り駒、角行の攻撃を、小駒である、仲人・嗔猪・桂馬で防がなけ
れば、駒得で有利にはならないから、普通唱導集の第2節の内容
から見て、少なくとも小駒である事だけは、確かなのではないかと、
私は思っている。

ただし、水無瀬兼成の将棋部類抄の、後退できない嗔猪という説が、
絶対に正しいという事も無いだろうと思う。

そもそも、嗔猪が一歩後退するという手を指すというのは、かなり
稀であり、もともとどちらでも良いという程度の差だろうと、私は
思う。ではなぜ、より時代が下った新しい将棋の書の方が、
もともとの鎌倉時代後期の正しいルールを記しているのかだが、

江戸時代の将棋図式の著者が、誠意情報を収集した結果、江戸時代
にかすかに残っていた、嗔猪の正しいルールが、たまたま記載された
という事が、絶対に無いとまでは言えない

と、歯切れは悪いが、その程度の事しか私には言えない。そもそも
将棋図式には近代になって、だいぶん調査が進んでから明らかにな
った、36×36升目804枚制大局将棋の情報が載っているし、
猫叉の2回動きで、天竺大将棋の奔鷲の動きを説明している点も、
麒麟の元々のルールをどこからか、知りえた可能性もあり、興味
深い点と私は考える。なお、将棋図式の著者が嗔猪を、計4方向
隣接升目動きにしているのは、明らかに、猫叉と対駒と考えている
からである。
 大局将棋を知りえる人間が、二中歴の平安大将棋を知らないとは
考えにくく、平安大将棋は将棋図式には書かなかったので、平安
大将棋の猛虎を大将棋の猫叉で置き換えて、天竺大将棋の奔鷲
の動きを、説明したのかもしれないと私は思う。猫叉は平安大将棋
の猛虎と同じ動きであると、将棋の進化過程に関する、何らかの
情報源を持っていたのかもしれない将棋図式の著者には、特に注目
されていたのかもしれない。
 更には、将棋図式の著者の鉄将の動きの説明が「前進方向の、
三つの角に、それぞれ一歩歩む」となっていて、ややおかしく
独特である点が挙げられる。実はこれは、平安大将棋の二中歴の
鉄将の動きが、「後退方向の三つの方向に、行けない」となって
いるのに、説明のしかたが似ている。個人的に私は、平安大将棋も
江戸時代の将棋図式の鉄将の説明の仕方の方が、二中歴の説明より
正しく、平安時代中期の二中歴の元著者が、ルールを間違えた
可能性も有るとみている。根拠はあまりクリヤーなものではないが、

平安大将棋で、最下段の駒が金将から袖に向かって、香車が走り
である点に目をつぶれば、鉄将が後期大将棋の動きでさえあれば、
順に6、5、4、3、2、1方向動きと、規則的になって、より
覚えやすくなると考えられる

からである。将棋図式の著者は、江戸時代の人ながら、平安末期
の将棋のルールに関しても、我々が知りえるより、詳しい情報を、
どこかから、仕入れていたのかもしれない。大局将棋の発見の
一件が前例として有る以上、将棋図式の後退できる嗔猪が、絶対
に間違ったルールだとまでは、以上の事から、今の所は言えない
のではないかと、私は思っている。(2017/05/12)