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アラブ・シャトランジと天文学(長さん)

マレーの「チェスの歴史」は、書かれてから大分年月の経つ、大著である。
そこには、日本の将棋の章もあり、中将棋の駒の動かし方ルールも載って
いて、すこぶる貴重な著作である。
 ところでチェス史に浅学の私には、論の背景が、はっきりとは掴めてい
ないのだが、アラブ・シャトランジと、その時代のイスラムの天文学との
間には、繋がりがあり、チェスと天文学とは繋がっている、と評する学説
があるらしい。そういえば、上記マレーの著でも、チェスの駒の一つ、
ナイトの、仮に連続して動かした場合の升目移動を、曲線で結んだ図が載っ
ていて、「ナイトの旅」とのコメントが、図の説明で付けられていたと記
憶する。
 増川宏一氏の「チェス」で、天文学との繋がり説の、説明が載っていた
と記憶する。が、「将棋Ⅰ」には、特に古典的チェス類と、天文学との繋
がりについての言及は見あたら無いようである。
 なお、アラブ・シャトランジ時代(西暦700年~800年)の日本で
の天文学は、空を眺めて星空に異変があれば、それを記録し、占うという、
占いのカテゴリーに近かった。しかし、アラブ世界では、天文学の暗黒時
代に入った、「西洋中世」に於いて、アルマゲストのイスラム語訳等も行
われ、科学的な天文学が、古代ギリシャ文明期に、取って代わって、ゆっ
くりと進展していたというのが、私の若い頃からの認識である。つまり、
この場合の、西洋チェス史学の”天文学”に、陰陽道や、その類との関連
性は、比較的薄いと私は見る。従って、

この場合の、「天文学と、アラブ・シャトランジの繋がり」というときの、
”天文学”は、現在では天文学の中で、古典的で正統な、学術領域である、
太陽系の天体運行理論のイメージで、だいたい良いのではないか

と私は推定する。なお、同じような内容が、水無瀬兼成の将棋部類抄の、
出だしに書いてある。が、日月星辰の動きの研究は、日本では江戸時代ま
では、天文道では無かったと、言う事になろう。つまり、「チェスの歴史」
のマレーの「ナイトの旅」は、ほぼ、天文学・イスラム・シャトランジ関
連説を下敷きにしているとして、的を得た説明図になっているように、私
は思うのである。
 ところで、この学説は正しいと思うのかと言えば、

私は否

だと見る。理由は、

基本的に特に太陽系内の天体は、他の天体と衝突はせずに、事実上永遠に
存在して、動き続けるという点が、チェスやアラブ・シャトランジの駒と
は大いに違う

と思うからである。恐らく、アラブの中世にシャトランジを指した棋士が、
たまに数日置きに、夜空を眺めて惑星を観察し、その位置が星座に相対し
て動いているのに気がついても、シャトランジの駒に、なぞらえる事は、
無かったろうと、いう事である。つまりマレーの「ナイトの旅」図も、
この場合のナイトは、基本的に、有限の動きの中で、相手の駒に衝突して、
相手を破壊し、また、しばしば、それ自身も相手の駒で、取り返されるこ
とを覚悟の上で、運行しているのである。この点で、慣性の法則により、
もともと止まることができず、また、空間が広いために、めったな事では、
他の天体と衝突しない、アラビア天文学で題材にされた、太陽系内天体の
多くの行く末とは、大いに異なると私は思う。
 つまり、マレーのチェスの歴史の図ように、

たとえばチェスのナイトが、いつまでも、”変わった曲線”を描きなが
ら旅を続けることは、基本的に無い。

ので、少なくとも”ナイトの旅曲線”は、架空の話だと私は見る。よって、
天文学が、チェスやアラブ・シャトランジと繋がるためには、太陽系の中
でも、衝突する天体を探すしか無いと思う。そのような天体が、全く無い
のかと言えば、18世紀頃からは、存在が認識されており、

流星物質が典型例

だと私は認識する。なお流星物質の”対局相手の駒”は地球の大気分子で
ある。
 では、たとえば駒数多数将棋の完全解析をして、太陽系内天文学の一分
野である、流星天文学に寄与する可能性があるのかと言えば、

大気中での高速突入塵(流星物質)の発光光度の挙動を、初学者が、理解
しやすくなるという点では、多少の効果は出るのかもしれない

と私は見ている。流星体単位断面積あたりの発光光度が、衝突大気分子の
数に比例しないのは何故なのかという、大気の突入角度による、流星の光
り方の挙動を解析する問題と、駒数多数将棋の競技の進行とは、関連して
いると、私は考えるからである。どういう事かと言えば、流星物質が輝く
とき、攻められれば攻められるほど多く、弾き飛ばされて、流星物質に対
して、ほとんど同じ速度で運行する、小駒に例えられる”弾き飛ばされた、
流星物質の蒸発気体分子”が、流星物質の方を止めた座標系で見たときに、
実際には激しく膨張しながらも漂う、遮蔽物群(ガス球)として存在する。
そこで大気分子に対応する、走り駒の数を増やしても、遮蔽ガス粒子群に、
大気分子が行く手を阻まれて、走り駒としての平均自由行程が、大きく減
少する。ので、相手の本陣への衝突数に依存し、さらにそれに比例する、
単位断面あたりの、流星の光度(明るさ)は、大気の密度を増加させても、
ある密度より上では、ある一定以上の光度よりも、大きくはならない。
すなわち、

流星物質表面の単位面積あたりの明るさは、大気圧が一定以上になると、
飽和するのだが、これは駒数多数将棋の、駒枯れに至らない終盤、中盤、
仕掛け局面を、この順番(逆順)でイメージすれば、理解がかなり、しや
すくなる

のではないかと、私は思うからである。つまり、攻め走り駒が多いという
のになぞらえられる、大気が濃いほど、流星は明るく輝くのではと勘違い
するのは、将棋の中盤初期の、味方の小駒に例えられる、流星物質の蒸発
分子の、地球大気分子が、流星物質本体への衝突をめざした、走り駒運行
に対する、遮蔽物として働く効果の存在を、忘れているからという事にな
る。

以上の事から現代的には、戦争に似た、衝突破壊現象である、流星物質の
発光学と、駒数多数将棋の親類であるアラブ・シャトランジとは関連する

のかもしれない。が、西暦700年~800年頃に、流星本体が、地球外
からやってきた、微小な塵であるとの認識は無く、ギリシャのアリストテ
レス以来、

アラブの中世では、流星は大気現象だと思われていた。であるから、
アラブ・シャトランジと当時の天文学とは、繋がっているとは言えない

のではないかと、私は結論しているのである。
なお、明日の明け方あたり「ペルセウス座ガンマ流星群が、たくさん出る
が、月明かりに邪魔されて、今年は例年より見える数が少ない」との旨、
さいきん私の知人から私宛に、手紙で連絡が来ているので、一応末尾に
紹介しておく。(2017/08/12)

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